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インプラント治療


本当のインプラント治療はこれだ

はじめに

平成24年の現在、我が国でインプラント治療は大変普及し、多くの歯科医院や歯科大学病院でも行われるようになっています。インプラント治療は、従来の入れ歯にはない利点や長所があり、その恩恵を享受されている患者さんが増えてはいますが、他方ではそれに伴うトラブルや苦情件数も増加しているという報道もされています。

私がインプラント治療の研修を受けるために、仲間の歯科医師とドイツ(当時西ドイツ)を訪れた1988年当時、日本ではどの歯科大学・歯科病院でもインンプラント治療は全く行われておらず、それどころかインプラント治療そのものを疑問視、あるいは反対する風潮すらあったのが実情です。

現在世界的に承認されているインプラントは、スウェーデンのブロンネマルク教授によって開発され、1960年に初めて臨床応用されたものが起源となっています。これはチタン製の顎の骨と強固に結合するタイプ【オッセオインテグレイションと呼ばれる】のもので、欧米では、その後、と共に、各国の研究機関によって基礎研究がなされ、手術技法や移植技術が格段に進歩してゆくと共に、医療メーカーによるインプラントに必要な材料、医療器具の開発が進められました。我が国では、21世紀に入りようやく歯科大学や学会で認知されるようになり、インンプラント治療に関するの研究や治療が行われるようになりました。

インプラント治療は、今後ますます普及することが予想されますが、顎骨への外科手術を伴うものであり、確実に咬合機能を回復するためには、高度な診断と技術が要求されることに変わりはありません。そして適切な診断と技術のもとに行われれば、インプラント治療によって、異物感や違和感のない、自分の歯に匹敵する機能回復を達成することができる反面、まだまだ課題もかかえているのです。

インプラントに興味と関心をお持ちの方は、(1)全ての症例でインプラントが可能と言うわけではないこと、(2)インプラントは天然の歯とは異なるメカニズムをもっていること、などを認識いておくことも非常に重要だと言えるでしょう。そしてインプラント治療を受けたのなら(3)インプラントは歯周病(インプラント周囲炎)になる可能性があり、その予防対策に患者さまと医療担当者の双方が全力をあげる必要があることを認識する必要があるのです。

インプラント治療を原則通り行えば、残りの患者さま自身の歯を長持ちするのにも貢献するものです。自分の歯とインプラントを共に口腔内で長期安定的に維持するためには、メインテナンスが重要になってくることを、十分理解して頂きたいと考えています。

インプラントとはどんな形と構造?

歴史的にはいろいろの材質や形状のインプラントが使われてきましたが、現在世界的に承認されているインプラントは高純度のチタンという金属材料でできており、円柱の形態にスクリューが付与されているものが主流です。

これは、1960年代からスウェーデンのブロンネマルク教授らによって行われた「純チタンは骨と強固に結合する特性がある(オッセオインテクレーションと呼ばれる)」という臨床研究に基づいており、表面の形態や性状はその後さらに改良がなされています。

表面が繊細で粗造なチタン表面の上では、骨を造る骨芽細胞が骨を形成する働きがあることがその後の多くの研究で確認されています。


インプラント治療

インプラントとは、歯がなくなった後に人工歯根として顎(アゴ)に埋めるもので、その上にクラウンやブリッジを装着すれば、殆ど自分の歯のように噛むことができるようなります。従来の「入れ歯」にはない長所や利点が沢山あります。

しかし、インプラント(人工歯根)を確実に機能させるためには幾つかの重要なポイントがあることを知っていただく必要があります。

まず第1は、インプラント(人工歯根)は顎(あご)の骨にしっかり支えられていなければならないということです。そのために骨の中に埋め込む<埋入手術>が必要になります。現在承認されているインプラントは純粋なチタンという金属でできており、顎の骨にしっかりと結合し、噛む力にも耐えられてことが証明されています。

このチタンと骨が確実に結合する状態(オッセオインテグレーションとよばれる)を得るためには、手術後、インプラントを一定期間(3ヶ月〜6ヶ月)の間、骨の中に埋めたままの状態で維持しなければなりません。その間の期間は、一切インプラントに外力を加えることができません。

そしてインプラントと骨との結合が確認されてから、はじめてその上にクラウンやブリッジを作製する技工作業にとりかかります。それが口の中で無理なく機能するためには精密な調整も必要ですので、通常の歯科治療に比べ「長期戦」になることを認識しておいていただく必要があります。


インプラントはアゴの骨の中に埋める

第2に重要なことは、上顎、下顎のそれぞれの骨格には形態的な特徴があり、インプラントを埋入する上で考慮しておく必要があります。また骨の状態に個人差がありますので、インプラントを埋入するのに適切な状態(形態や密度)であるかどうかを事前に診断しておくことが重要になってきます。

【A】上顎の骨の特徴−上顎洞ー
上顎では、左右両側に「上顎洞」と呼ばれる空洞がありますので、これを突き抜けないような手術法とインプラント体の選定を行わなければなりません。上顎の骨は密度が低く、構造的に弱いことがあるので、骨移植などを行って骨を強化する必要がある症例もあります。

【B】下顎の骨の特徴ー下歯槽神経ー
下顎では、左右両側の骨の中に神経と血管が通っている管(下歯槽神経管)があり、インプラント手術でこれに触れたり傷つけたりしてはいけない、ということになります。当然この管より上の部分の骨にインプラントを埋入することになりますので、骨の太さと長さに合った長さや太さのインプラント体を選ばなければなりません。


CTスキャンによる画像診断

インプラントを埋入する前に、顎の骨を診査する最も的確な方法が<CTスキャン>と呼ばれるエックス線診査です。

<CTスキャン>とはコンピューター断層撮影法(Computed Tomography)の略語で、あたかも身体の撮影部分を切断したような断面像を見ることができるものです。これにより、術前にインプラントの埋入の予定部位の骨の状態(形態、構造、密度)を予推定し、果たしてインプラント治療が可能かどうか、また可能ならばどのような太さの長さのインプラントが適切かを選択しておくことができます。

(CTスキャンのために必要なエックス線の照射量は、顎の部分では極めて少量ですみますので、放射線による被爆についてはほとんど心配ありません)


インプラントと天然歯とはどう違うのか

近代のインプラントは、適切な手術のもとに、精密な技術と部品で構築されれば、天然歯に近い、あるいはそれ以上の機能を発揮してくれます。
しかしやはりインプラントと天然歯とは幾つかの点で異なったメカニズムで口の中で維持され機能されるものです。

【A】インプラントと歯は骨との結合様式が違う
まずインプラント(材質は純チタンという金属)は、既に述べたように、顎の骨に埋入手術を行って一定期間放置することにより、周囲の骨組織と強固に結合した状態を獲得することができます。
その結果、インプラントは天然歯のような動揺(グラグラすること)がありません。もし動揺していたらそれは失敗ということになります。
天然歯の場合、歯根と周囲の骨組織とは特殊な硬い靭帯(線維)で結合しているため、この線維がクッションの役割をしており、僅かの動揺があります。もちろん目でみた分かるくらい動揺していたら、それは病的な状態であり、歯周病が進行していると考えなければなりません。

【B】インプラントと歯とは歯肉との結合様式が違う
第2は周囲の襟首部分の歯肉(粘膜)が、天然歯の場合は線維のような組織が歯根(セメント質)と結合し、唾液や細菌が侵入するのを防いでいますが、インプラントとの場合は、そのような粘膜とチタンとの結合するメカニズムはありません。粘膜組織はインプラントの入り口部分で密着しているだけなので、常日頃の清掃を怠らず、清潔な状態維持し、管理することが非常に重要になってきます。


上顎へのインプラント(1)

上顎の奥歯の部分へのインプラント治療は、上顎洞(副鼻腔)とよばれる空洞が上顎骨のすぐ上にあるため、この位置と大きさを考慮に入れる必要があります。

もし上顎骨の上顎洞底までの厚さが十分存在する場合には、そのままインプラントを埋入することができます。しかしもし、上顎洞が大きくて、上顎骨の高さが不十分な場合は、無理矢理インプラントを埋入しようとすると、上顎洞の底の粘膜を突き破ってしまいます。

このような場合は、上顎洞の底の粘膜を持ち上げて、骨を造成(移植)して骨の高さを厚くする必要があります。私は1995年米国のインプラント専門医のバブッシュ先生に、それまでのスマイラー式手術法の改良型の上顎洞底の挙上手術を習い、日本に帰って十数人の患者さんにこの手術をさせていただきました。

下の図はこの術式を表していますが、インプラント埋入と同時に、骨の移植に患者様本人の腸骨を採取し、これを移植するものです。そのため外科医と共同して手術を行なわなければなりません。



上顎へのインプラント(2)

1997年に米国の歯科医師サマーズ氏が従来の複雑な上顎洞挙上手術に代わって、独特な一連の金属製ノミ(オステオトーム Osteotome)を考案し、これを使って安全に上顎洞底の粘膜を少しずつ押し上げる方法を考案しました。それだけでなくこのノミで形成されたソケットに人工骨あるいは下顎骨を移植することにより、上顎骨の高さを上げるだけでなく、骨密度を増して、強力にインプラントを支えることも可能になりました。



下顎へのインプラント


前歯がなくなってもインプラントで回復(1)

56歳女性
2006年10月右上2番歯周病が進行したため抜歯
2006年12月インプラント埋入(φ4.0mmℓ13mm)
2007年 7月インプラント開窓手術
2007年8月上顎前歯の歯列矯正治療開始
2008年2月矯正治療終了、保定開始
2008年5月インプラント・クラウン装着


前歯がなくなってもインプラントで回復(2)

73歳男性
上顎:前歯(左右中切歯)の喪失
1910年 3月インプラント埋入手術(Φ3.5mmℓ13mm;2本)
1910年10月インプラント開窓手術
1910年12月インプラント上部構造装着


この方は上顎の前歯に<差し歯>を装着されていましたが、よくはずれ、またグラグラして大変困っておられ、当院に来院されました。

真ん中の中切歯は歯根がとても弱くなっており、抜歯してインプラント治療を行いました。左右の側切歯は歯根が比較的しっかりしていたので、きちんと歯内療法をおこない、セラミック冠を装着しました。

この患者さんの上顎の前歯のインプラント治療では、被せた二本の人工歯は裏側のスクリューで固定してあり、患者さん自身で取り外すことはできないタイプです。両サイドの側切歯とは隣同士接触しているだけで、連結されていません。

ご本人には大変よろこばれるとともに、毎日きちんと歯磨きをされ、経過良好です。半年毎に定期検診と超音波洗浄に来て頂いています。

この症例な「スクリュー固定式」ではなく、患者さんご本人が人工歯を取り外しできる「患者着脱式」のタイプもあり、発音や清掃あるいは外観も考慮して、どちらの方式がよいか選択する必要があります。


上顎奥歯にインプラント

52歳男性
上顎右犬歯、小臼歯、大臼歯を喪失
1995年11月 インプラント埋入手術(3本)、上顎洞底挙上手術、
1995年11月 腸骨より採取した海綿骨を上顎洞底に移植
1996年07月 インプラント開窓手術
1996年08月 インプラント上部構造装着
2012年03月 インプラント異常なく良好


この男性は上顎の右側の犬歯と小臼歯、大臼歯が抜歯されて食事ができず、大変困って来院されました。それ以外の歯も、歯周病が進行していたため、まず歯周病の基礎的な治療にとりかかりました。その後、歯周外科手術も行い、歯周病の進行をストップさせました。

歯がなくなった上顎右側には、インプラント治療を行いました。上顎洞が大きかったため、上顎洞底の挙上のため、ご本人の腰骨(腸骨)から採取し、その骨を上顎洞底に移植し、同時にインプラント3本埋入する手術を行いました。

腸骨からの骨の採取は親友の外科医に依頼しましたので、インプラント埋入手術は名古屋市内の病院の手術室で行いました。

本人の歯磨きが大変よく、その後の定期的なチェックと超音波洗浄を継続しており、17年後の現在も大変良好に使って頂いています。


奥歯1本喪失;でも2本のインプラント

65歳女性
右下第2大臼歯を歯周病進行のために抜歯。その部位にインプラント治療
2010年2月 インプラント埋入手術(φ3.5mmh8mm、φ3.5mmh9mmの2本)
2010年8月 インプラント開窓手術+遊離歯肉移植手術
2010年10月 インプラント上部クラウン作製・装着

右下第2大臼歯の歯周病が進行したため、やむなく抜歯しましたが、「たった一本の歯がなくなっただけでも、食事しにくい」とのことでインプラント治療することにしました。

通常1本の歯をインプラントで再生させるのには1本のインプラントで行うことが多いのですが、大臼歯は本来<2根歯>であるので、長期安定を考えて2本のインプラントで上部構造のクラウンを支える方式にしました。

インプラント周囲の粘膜が弱かったため、上顎の硬い歯肉をインプラントの外側に移植する手術をおこなっています。

ご本人は歯磨きや食生活について常に留意されています。

インプラント治療完了後、食事にも日常生活にも違和感が全くなく、大変満足されています。


下顎総義歯の支えにインプラントを活用できる

81歳女性
主訴:上下の義歯(総入れ歯)があわなくて噛めない
2008年12月 下顎にインプラント埋入手術 (φ3.5MM h9mm2本;φ3.5mmh11mm2本)
2009年 5月 インプラント開窓手術
2009年 7月 インプラント・サポート型水平バーの作製・装着
2009年 8月 下顎義歯(内面にクリップ装着)の完成と使用開始

下顎の総義歯(総入れ歯)は、口の中で安定させることが非常に困難です。義歯の名医であっても、顎の土手(歯槽堤)が痩せて低くなっている患者さんの場合、口の中で義歯が動揺してしまい、しっかり噛むようにすることが困難となります。

もし下顎にインプラントを2〜4本でも埋入することができれば、クリップ式、あるいはボール式のアタッチメントを使うことにより、義歯の動揺を防ぐことができます。

この患者さまには、4本のインプラントを下顎の前の方に植立しミニクリップで義歯を固定できたため沢庵・野菜・肉類・・なんでも噛めるようになり、大変喜ばれました。



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